第46回目のテーマは「桜」です。春、日本各地で咲き誇る桜の花、上品で可憐な桜色が町を染め花びらが風に舞い散る様子は幻想的です。桜は日本を象徴する花で花と聞けば桜を想像する人も多くいます。日本各地に300種類以上の桜があります。桜は重要なモチーフでもあります。漆器のわんに桜が描かれています。漆器塗りの文箱(ふみばこ)です。身の回りの品に桜を描くことで春の香りを感じてきたのです。日本人は古代から花を愛で歌に詠んできました。10世紀ごろになると桜が春の歌の重要な題材になりました。その頃書かれた物語や和歌には桜の花が多く登場します。「散ればこそいとど桜はめでたけれうき世になにか久しかるべき」(散るからこそ桜は美しいこの世に永遠なるものは無い)。美しく咲いたかと思えば散る桜の姿に自分の人生を重ね合わせました。江戸時代になると花見は庶民の娯楽として広く行われました。桜の季節になると人々は料理や酒を持ちより宴(うたげ)を催しました。日頃のうっぷんを晴らす場でもありました。19世紀半ば新種の「ソメイヨシノ」が誕生しました。大きく白い花びらで簡素な美しさが特徴です。ソメイヨシノは開花期間が短く咲いたと思いきやすぐ散り始めるので咲く姿だけではなく散りゆく姿にも美を感じる日本人の感性に合いました。季節の移り変わりに世の無常を感じること、またそれと同時に飾らない美を愛すること、この美意識を日本人は1000年以上、桜に託し続けてきたのです。

<burst into bloom ・・・ (花が)一斉に咲き乱れる>

毎年、春には日本の至る所で桜が咲き乱れます。
Every spring,the cherry trees all over Japan burst into bloom.

*come into bloom ・・・ 開花する
  be in full bloom ・・・ 満開である

<not only A but also B ・・・ AだけでなくBも>

多くの日本人は咲いている花だけでなく散りゆく姿にも美を見出します。
Many Japanese find beauty not only in blooming flowers but also in the way they flutter.
 
<桜とバラ>
桜は日本で最も親しまれている花の1つです。平安時代以来、和歌の世界では花と言えば桜を指しているほどでした。また満開の美しさもさることながら桜が散る姿に独特の美意識を抱いてきたのも日本人の特徴と言えるでしょう。現代のポップミュージック界でも桜を題材にした歌が数多くヒットしていますがその多くが満開の桜だけでなく散る桜も表現していることに1000年来の美意識が溶け込んでいるような気がします。一方、西洋で長い間、花の代表格とされてきたのバラ(rose)です。古今の詩や歌詞に登場する回数も他の花に比べて目立った多いと言えます。中でも特徴は咲いている間の美しさやかぐわしさが強調され、愛や美の象徴として表現されることです。古代ギリシアでは愛と美の女神、アフロディーテと関係付けられていましたし、有名なロミオとジュリエットセリフ、A rose by any other ranme would smell as sweet.(バラは他の名で読んでもよい香りがする)というのもその特徴を表していると言えます。バラが散る姿に美を求める感覚は少なく日本の桜とは対照的な愛され方と言えるでしょう。花一つを比べても愛で方が異なり、文学や詩歌中での表現のあり方も変わります。それらを比較して日本と西洋の美意識の違いを考えてみるのも興味深い言葉の学習と言えます。