第42回目のテーマは「筆」です。白い紙の上を流れる筆。筆が走る度に力強い文字や柔らかな文字が生み出されます。書道に欠かせない筆は身近な筆記具で動物の毛を束ね軸につけて作るシンプルな道具です。日本では年の初めに「書き初め」を行います。新年の決意や祈りを書に表すという日本人の生活に根づいた文化です。筆は3000年ほど前に中国で誕生したと言われ、日本には6世紀ごろ漢字とともに伝わりました。奈良時代には中国から多くの仏典が持ち込まれ仏教を学ぶため写経が盛んに行われました。平安時代になると漢字を省略可させた仮名文字が誕生します。仮名の発達に伴い筆も改良されます。より細くなめらかな仮名に向くよう穂先が長くなりました。では筆の作り方を見てみましょう。筆は用途に応じた特徴を出すために長さや種類の違う毛を混ぜて作られます。まずは選毛です。筆にふさわしい動物の毛を撰びます。筆のどの部分に使われるかによって毛が分類されます。選んだ毛を丹念に取り除き良い毛だけを残します。毛をひとつにまとめ、すく作業が毛先がそろうまで何度も繰り返されます。先端を入念にすくことで「はらい」や「はね」が美しく書けるようになります。このような細かい作業を経て10日から1か月ほどで完成します。筆作りの技術は他の分野でも応用されています。化粧筆です。国内外を問わず人気が高く毛先の肌触りの良さが特徴です。古来、親しまれてきた筆の技術は分野を超え世界に広まっています。

<along with ~ ・・・~とともに>

筆は6世紀ごろ漢字とともに伝わりました。
Brushes were introduced to Japan around the 6th century,along with kanji.

<particular・・・ 普段以上の・格別の>

筆の先端の毛に格別の注意が払われます。
Particular care is given to the hairs at the tip of the brushe.
 
<筆とbrush>
英語では棒状のものに細かな毛を植えつけたものは用途に限らず「brush」という言葉で表現されます。しかし日本語では文字や絵を書くものは「筆」、ペンキや漆などを塗るのは「はけ」と用途によって言い分けています。この違いの背景には東洋と西洋での筆やbrushのたどっていた歴史に秘密がありそうです。中国や日本など東アジアでは文字を書くのに古くから筆が使われました。紙がいち早く発明され普及した中国では筆が高度に発達し紙と筆の文化はそのまま日本に伝えられました。筆は中国や日本で使われた漢字と相性のよい道具だったのです。こうした文化を持つ日本では似た形状を持つ道具でありながら文字や絵など意味のあるものを書くものは「筆」、のりや塗料を塗るためのものは「はけ」と2つの言葉で古い時代から厳格に言い分けていました。一方、古代の西洋ではパピルスや動物の皮に文字や絵を書いていました。これらの材料にはより固い先端を持ったpen(ペン)が適していました。その後、紙が中国から伝わった後もアルファベットの形と相性が良かったこともあり西洋ではpen(ぺん)が筆記具の中心でした。そのため中国や日本に比べて棒状のものに毛をつけた道具は文字を書くと言うよりもほこりやちりを払うためのものや絵の具を塗るものと言う認識が強かったのです。文字を書くpen(ぺん)という道具が発達した結果、西洋では日本のように書くことに特化したbrush、筆といった言葉が必要なかったのでしょう。


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